ミッシェル・アンリ <コクリコとチェリーの赤いシンフォニー> 油彩25号
ミッシェル・アンリ <コクリコとチェリーの赤いシンフォニー> 油彩25号
ミッシェル・アンリは花をメインに描く画家でビュッフェ、ブラジリエなどと共に20世紀フランス画壇を代表する画家です。絵画から幸福感感じられるので、フランスでは幸福の画家、ポピーを多く描くのでアメリカではポピーの王様と呼ばれています。透明感のある色彩は、宝石に例えられます。赤はルビーの色、ブルーはサワイアの色、緑はエメラルドの色、深みのあるブラウンはトパーズの色言われます。ミッシェル・アンリの絵画はパリ市近代美術館、スエーデン王室、モナコ公国、サウジアラビ王室等が収蔵しています。ギャルリー亜出果は1995年以来ミッシェル・アンリの日本総代理店として日本各地の有名百貨店、画廊でミッシェル・アンリ来日展を企画し、ミッシェル・アンリの作家自筆サイン入りオリジナル版画の制作、絵画版画の販売、著作権の管理をしています。
何という絵だろう。キャンバス一杯に赤、赤、そして又赤だ。例外は花弁の中心の花芯、小さな蕾とチェリーの茎としてあちこちに点在している薄緑と霞草の白い点のみだ。このように同一系統の色彩のみで描いて、オブジェの形状も。構図も美しい姿を保ち、絵全体が光輝いている。コクリコとチェリーの美しさもさることながら、透明な花瓶の下でクリスタルのようjに輝きオブジェの影を映しだしている透明感のある空間も素晴らしい。放射拡散する彩度の高い緑と白の効果にも驚かされる。私はこの絵を見ながら、あまりの美しさに溜息ばかり漏らしている。俳聖の松尾芭蕉が奥の細道の旅の途中に、松島の佇まいのあわれさに感動の余り言葉を失い<松島や、ああ松島や、松島>とつぶやいたと伝えられているが、私も天才ミッシェル・アンリのこの絵の前で言葉を失う。ミッシェル・アンリが【絵が私を越える時がある】と言うのを聞いた事がある。つまり、彼の予期しないまでに美しい絵が出来上がる事があると言っているのだ。ミッシェル・アンリは自分が何をどのように描きたいかを、インスピレーションに導かれながらも、いつも明確に意識して描いているから、彼の画家としての力量で自分の意図の儘に絵を導き完成度の高い絵を描くのだ。ところが、彼の予測を遥かに超えた美し絵に仕上がる事があるのは不思議な事だ。美の神が時として、美を創造するのはミッシェル・アンリではなくて、神の領域だという啓示をミッシェル・アンリに示すのかもしれない。
このコクリコとチェリーを描いた、赤と赤、そして赤が響きあうこの絵はまさに、ミッシェル・アンリ自身を越えた絵なのだろう。私は過去に何十点もの、ミッシェル・アンリが描いたコクリコのブーケの絵を見てきたが、これほど色彩が輝き、赤い色彩どうしが調和して、優雅にオブジェが構成された、光に満ちたコクリコのブーケを見たことがない。まさに、神か天才の未知の領域を引き出し創造させた絵画としか言いようがない。
ギャルリー亜出果 武田康弘