ミッシェル・アンリ作品解説

ギャルリー亜出果の武田康弘によるミッシェル・アンリの油彩画作品の解説集です。ギャルリー亜出果は1995年~2016年迄ミッシェル・アンリの日本総代理店でした。2016年のミッシェル・アンリ没後は、ミッシェル・アンリ絵画販売を継続しています。ギャルリー亜出果は日本で唯一のミッシェル・アンリ著作権管理、ミッシェル・アンリ絵画鑑定機関です。すでに完売した絵画の解説のみ集めました。販売中の絵画の解説はその絵画の画像をクリックして作品詳細ページで解説しています。

ミッシェル・アンリ 【赤いシンフォニー】 油彩50号 【額付】

ミッシェル・アンリ作 赤いシンフォニー 油彩50号

作品解説

ルネッサンス以降エコール・ド・パリまでの絵画を見続けてきたが、赤に赤を重ねてこのように美しく輝く絵を描く画家を見たことがない。
ミッシェル・アンリは、ボザール(国立パリ高等美術学校)で2人の教授についた。予科はナルボンヌ、本科はシャプラン・ミディだ。ナルボンヌはデッサンの教授で、シャプラン・ミディは色彩の大家だった。ナルボンヌのクラスでは、ビュッフェも同じクラスにいたが、彼は色彩を学ぶ事なく中退し、生涯シンプル化したデッサンで描き続けた。
シャプラン・ミディは、ミッシェル・アンリが赤を明るい色彩とし絵画を成功させていのを見て、ミッシェル・アンリは私を越えたと言った。従来の色彩論では赤は暗い色彩に分類されるが、ミッシェル・アンリは赤を基調に明るく輝く絵画を描いたのだ。赤に赤を塗り重ね、美しい色彩のハーモニーを奏でさせ、美しい形状も描きだす。ルネッサンス以降の誰も成し遂げなかった偉業を彼は成功させた。ミッシェル・アンリは30種類もの国籍の違う赤系統の絵具を使用する。赤はミッシェル・アンリにとって運命的な色彩であり。彼の天性の才能を輝かせる色だ。

ギャルリー亜出果 武田康弘

 

 

ミッシェル・アンリ <透明な赤> 油彩100x100cm

 ミッシェル・アンリ 【透明な赤】 油彩100x100㎝ 【額入】 ギャルリー亜出果が直接ミッシェル・アンリから購入した作品です

<国民美術協会ルーブル美術館展展示作品>

  Exposee au salon de la societe nationale des beaux-arts  au carrousel du Louvre>

赤い背景がキャンパスの全体を覆いつくしている。その赤の上に美しいマチエールで赤い花が描かれている。くっきり浮かび上がった不規則な花々のマチエールが響きあい美しいハーモニーを奏でている。画布中央の最上部の花を頂点に左右のグラスの縁を結んで、左右の画布の下の隅に至る線が美しく大きな三角形を形作っている。背景の後ろから光で照らされているように、背景の赤は光を発している。構図、色彩、光、マチール、と完璧な絵画性を備えた作品で、赤い画布に吸い込まれそうな眩暈を覚える。 

ギャルリー亜出果 武田康弘

 

ミッシェル・アンリ作 <ブーケパナッシェ> 油彩10号

 ミッシェル・アンリ 油彩画10号 ブーケパナッシェ

 この絵に解説は必要ない気がする。それ程普遍的な美しさに溢れた絵だ。赤系統の色彩の見事な組み合わせで描かれたブーケで、華やかな色彩のシンフォニーだ。タイトルのブーケパナシェは混在するブーケ。つまり色々な花を組み合わせたブーケという意味だ。パナシェはフランス語で混ぜ合わせたという意味で、フランス人がよく飲むビールとソーダを混ぜた飲み物はパナシェと言われている。ピンク、ヴァイオレット系の花弁と白いかすみ草で活けられたブーケを描いている。メイン赤いコクリコの花弁だが、その他花は花弁から花の種類は特定できないが、すらりと伸びた葉から推測するとアイリス系統の花のようだ。赤系統の色彩群で統一されていて、葉茎の緑がにアクセントになっている。色彩環でいうと、赤を中心に黄色に近いオレンジから、赤を中心に青に近いピンク、ヴァイオレットに至る赤を中心の色彩のヴァリエーションで描いている。背景は斜めにクロスする線上を透明感のあるピンクと白濁色で描いている。背景の後ろから光が入り込んで、ブーケを立体的に浮かび上がらせている。光は左後から入ってくるらしく、左半分は白乳色で右半分はピンクが濃くなっている。光を存分にキャンバスに取り込んて、立体的な花弁の色彩のハーモニーが眼と脳に眩暈ににた心地よい衝撃を与える。ブーケの傑作と言えよう。

ギャルリー亜出果 武田康弘

 

 

ミッシェル・アンリ <エッフェル塔とコクリコ> 油彩25号

ミッシェル・アンリ 油彩画30号 エッフェル塔とコクリコ

作品解説

ミッシェル・アンリは最後までイマジネーションに導かれた挑戦をやめなかった。この絵は2015年の始め描かれた最晩年の絵だ。背景のエッフェル塔のフォルムは単純化され透明なベールか白い幻影のように描かれている。エッフェル塔の左には上から黒い枝葉が垂れ下がっている。その黒い枝葉と半透明なエッフェル塔の後背に赤い花弁のような強烈な赤いオブジェが描かれている。この赤い連続したオブジェはミッシェル・アンリが生涯愛してやまなかったコクリコの花弁を空中に散りばめたように見える。空を一面に覆うコクリコの花弁達の乱舞こそ、ミッシェル・アンリの生涯にふさわしい。そのコクリコの花弁はエッフェル塔の透明なベールに濾過されて薄く透けてみえる。黒い枝葉の間からも垣間見える。花弁の形状を失っているが、私にはコクリコの花弁に見える。前景にはいつもどうり赤いコクリコのブーケが鮮やかに描かれている。背景の半透明なエッフェル塔と共鳴するように、ブーケ上部の花弁には白が配されている。コクリコのブーケの下には、林檎かスモモと思われる赤い果実が幾つも描かれている。ミッシェル・アンリがブーケを描く時にいつも、構図のバランスをとるため、ブーケの下あたりに果実を幾つか配置している。その果実が連続して多数描かれている。画家が生涯描き続けたコクリコ、そのパートナーの果実、背景のパリを描いた半ば抽象画と言えるこの絵はミッシェル・アンリが描いた全ての絵画を象徴する、最後の作品に相応しい感動的な絵だ。この絵から花と幸福の画家ミッシェル・アンリのアデユー=A Dieuと歓喜の歌が聞こえてくる。爆発する歓びのシンフォニーだ。

 ギャルリー亜出果 武田康弘

 

 ミッシェル・アンリ <アンバリッド橋> 油彩50号 2013年制作

 ミッシェル・アンリ 【アンヴァリッド橋】 油彩50号【額付】 2013年制作

ミッシェル・アンリがこのような、複数の花をアソートしたブーケを描くのは珍しい。ミッシェル・アンリは1種類の花を描き、そのブーケを風景に対峙させてその花の美しさを謳いあげる場合が殆どだが、この絵のブーケには野バラ、コクリコ(ポピー)と霞草複数の花弁が暖色系の様々な色彩で、透明なコンポートの上にそしてコンポート中にまで描かれ、その色同士が響き合っている。花がコンポートに活けられているというより、空中に発散しているような動きを感じさせる。透明なコンポートの周りには花弁の色と呼応する、暖色系のフルーツが描かれていてコンポートの中の花弁の色彩と一体になっている。ブーケの向こうにセーヌ川の水面が描かれている。水面は手前は暗く、遠くに行くほど空の色を映して明るいブルーになっていく。その向こうに橋がある。この橋はどう見てもこの橋はタイトルのアンヴァリッド橋ではな、アンバリッド橋の隣のアレクサンダー3世橋だ。アレクサンダー3世橋は、両岸に橋桁があるだけで川の中には支えの橋桁がなく、橋の下がアーチ状になって両岸の橋桁だけで、橋を支えているのと、両岸の欄干の橋の背の高い2対の柱の上に金色の彫刻がほどこされてるのが特徴だ。タイトルの<アンヴァリッド橋>の由来はアンバリッド橋の上から見た風景と考えられる。ブーケもアンヴァリッド橋の欄干の上に置かれた想定だろう。太陽が昇り始め地上に姿を現す前後の、闇から光に満ちた世界に移る僅かな間の薄明かりの中に浮かび上がったセーヌ川とアレクサンダー3世橋が描かれている。薄明かりの中でも鮮やかな花弁の色彩が浮かび上がる。夜が明けきる直前の数分間の光りのドラマがここにある。

 ギャルリー亜出果 武田康弘

 

 

ミッシェル・アンリ <3本のバラ> 油彩12号

ミッシェル・アンリ 【3本のバラ】 油彩12号

作品解説

ミッシェル・アンリの色彩には宝石の輝きがある。クリスチャン・デイオール社もそれを知っていた。1990年頃にクリスチャン・ディオール社は、クリエイティブディレクターをしていたジャン・フランコ・フェレに命じてミンクの毛皮に宝石の色彩施そうとした。フェレがその研究のパートナーに選んだのがミッシェル・アンリだ。二人は3ケ月間研究室にこもり、ルビーの赤、サワイヤの青、エメラルドの緑、トパーズの琥珀色でミンクの毛皮を染める実験をした。試作品のミンクのコートの制作には成功したが、制作コストが莫大で、クリスチャン。ディオール社は発売を断念した。試作品はアラブの金持ちが買ったらしい。この3本のバラの背景は、濃いトパーズの色彩だ。その背景の格子模様の隙間からブルーや透明な光が漏れてくる。トパーズは薄い琥珀色の物から、濃い茶色で光を反射した部分が琥珀色に光る石もある。トパーズ色の背景から漏れる光、その光を反射したり、茶色に染まった光を濾過して通すクリスタル花瓶の光の戯れの中で3輪のバラが楽しそうに微笑んでいるようだ。

ギャルリー亜出果 武田康弘

 

ミッシェル・アンリ <パームスプリングのバラ> 油彩40号 2021年

ミッシェル・アンリ 【パームスプリングのバラ】 油彩40号F【額付】

 

作品解説

パームスプリングはロス・アンジェルスから東に150キロ程いった所にある観光都市だ。ミッシェル・アンリはアメリカのフィンドレー画廊の時代に20年間毎年アメリカのフィンドレー画廊での展示会に行っていた。フィンドレー画廊はニューヨークに本店があるが、パリ、ロンドン、ロングピーチにも支店があった時代もある。1990年代後半にはミッシェル・アンリはカンヌが本店でパリにも支店があるアレクサンダー・レオヅーズ画廊と契約していて、アレクサンダー・レオドウーズ画廊は20世紀の終わりにロサンジェルスに出展したので、ミッシェル・アンリを招待してミッシェル・アンリ展を開催した。その年ミッシェル・アンリは東京の百貨店での展示会を終えるとそのままロサンジェルスに行った。パームスプリングは盆地で、小高い山や夏でも雪を頂いているかなり高い山もあるらしい。ミッシェル・アンリも仕事の合間の観光で訪れたに違いない。アメリカの大きな自然に中に親子のバラが楽しそうに屹立している。

 ギャルリー亜出果 武田康弘

 

ミッシェル・アンリ <青い影> 油彩12号

ミッシェル・アンリ 【青い影】 油彩12号F

作品解説

あるブルーを背景にクリスタルの容器に入れられた薄いピンク色の野バラとスモモが描かれている。背景のブリーは後ろから光を当たられた宝石のような輝きがある。イタリアブランドのジャン・フランコ・フェレは1989年~1996年フランスのクリスチャンディオールのクリエエイテイヴ・ディレクターを務めていた。その時、クリスチャン・ディオールがミンクの毛皮に宝石の色を付けて売りだそうとした。パリの人はミッシェル・アンリの色彩は透明感と輝きがある事をしっていた。ミッシェル・アンリのブルーはサファイア、赤はルビー、緑はエメラルと、黄金色はトパーズだ。クリスチャンディオール社はミッシェル・アンリを招聘して、ジャン・フランコ・フェレとミッシェル・アンリを3月間研究室に閉じ込めた。彼らは、見事な、ルビーの赤、サワイアの青、エメラルドの緑、トパーズの黄金色でミンクの毛皮を染め上げた、しかし、その為には非常に高価な染料を使用した為、販売のめどが立たなかった。試作品のミンクのコートはアラビアの金持ちが買ったらしい。この作品はサファイアの輝きを背景に描き、やはり透明感のあるクリスタル容器もサワイアブルーを反映している。クリスタル花瓶に収められた野バラと透き通るカスミソウ、クリスタルコンポートのスモモは薄いローズ色とワインカラーの上品な色彩をほどこされて、落ち着いた品格のある絵画となっている。たっぷりと光を取り込んだサワイアブルーの優美な輝きのある作品だ。

 ギャルリー亜出果 武田康弘

 

ミッシェル・アンリ <エッフェル塔とミラボー橋> 油彩40号

 ミッシェル・アンリ 【エッフェル塔とミラボー橋】 油彩40号F【額付】

 

【作品解説】

2007年に横浜で日仏作家展が開催されフランスからUnivers des arts 社のPatrice de la Parriere 社長が来日した。その際に出展された記念作品。手前のコクリコとさくらんぼうが三角の堅牢な構図を作り、セーヌ川が遠方に幅を狭めながら集束遠近法で描かれている。水直なコクリコとさくらんぼうの構図、水平なセーヌ川の構図で3次元空間を感じさせる。背景の淡いブルーと立体的に浮かびあがるコクリコが赤い色が美しく対峙している。ブルーと薄いローズ色の空と水が穏やかな喜びを与えてくれる。季節は初夏であろうか、そろそろ一日の終わりに向かう頃、パリの人々が永い夏の夕暮れに安らぐ頃であろう。

 

ギャルリー亜出果 武田康弘