ギャルリー亜出果
井口エリー Drown in me 私のお気に入り ワインスタンドシリーズ
井口エリー Drown in me 私のお気に入り ワインスタンドシリーズ
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SIze:45x30x25cm
Material: 水性樹脂、
木材、合成皮革
黒く艶やかなハイヒールを中心に、ワインボトル、鳥の脚や羽、毛皮など、異なるイメージを大胆に組み合わせた、ユーモアに満ちた彫刻です。
本作は、井口エリーの「ワインスタンド・シリーズ」の一作です。このシリーズのハイヒールは、明石家さんま氏から「女性の脚で作ってみてほしい」という意見を受けたことから生まれました。さらに本作では、さんま氏の若い頃の「七面鳥」というネタから着想を得ており、展示時期がクリスマスに近かったことも制作の背景となっています。
ここで興味深いのが、世界的な名作バッグ「バーキン」の誕生との共通点です。
1984年、女優で歌手のジェーン・バーキンは、パリからロンドンへ向かう飛行機の中で、当時のエルメス会長ジャン=ルイ・デュマと偶然隣り合わせました。彼女が、若い母親として使いやすいバッグが見つからないと話したことをきっかけに、デュマは彼女のための理想的なバッグをその場でスケッチしました。それが後の「バーキン」の誕生につながります。
つまり、バーキンも本作も、最初から完成された商品や作品として計画されたものではありません。一人の人物が発した何気ないアイデアや要望を、作り手が受け止め、具体的な造形へと発展させたことから生まれたという共通点があります。
ジェーン・バーキンの言葉を受けてジャン=ルイ・デュマがバッグをデザインしたように、明石家さんま氏の「女性の脚で作ってみてほしい」という発想を、井口エリーは彫刻として大胆に具現化しました。
もちろん、バーキンが実用性を備えたバッグとして生まれたのに対し、本作はワインを支えるスタンドでありながら、同時に独立した彫刻作品でもあります。しかし両者に共通しているのは、異なる分野の人との出会いや会話が、新しい創造につながっていることです。
本作では、艶やかな黒いハイヒールにワインボトルを組み込み、さらに鳥の脚や羽、毛皮という意外な要素を加えています。高級感を感じさせるワインやハイヒールと、動物的で少し奇妙なモチーフを一体化することで、見る人に驚きと笑い、そして「これは何なのだろう」という楽しげな違和感を与えます。
井口エリーの魅力は、日常の中にあるモノをそのまま再現するのではなく、異質なもの同士を組み合わせることで、まったく新しい存在へと変えてしまうところにあります。
明石家さんま氏の自由な発想と、井口エリーの造形力。その組み合わせから生まれた本作は、一つのアイデアが、作り手の想像力によって思いもよらない作品へと変貌する過程そのものを楽しませてくれる作品と言えるでしょう。
作品全体のテーマ
井口エリーの作品は一見スタイリッシュな外観を持ちながら、その裏には普段見えない人間の本能や感情が揺れ動く様子が隠されているのが特徴で、怒りや不満といった内面的な感情、繕われた外見と内なる本能の間に生まれる葛藤や緊張感を大胆に表現している作家です。
