技法
アルシュ紙にリトグラフ
制作年
1989年
限定部数
限定60部
別にアーティスト・プルーフ(A.P.)20部、および非売用(H.C.:Hors Commerce)刷りが制作されました。
サイン
作家直筆鉛筆サイン入り
エディション
H.C. 19/20(非売用刷り20部中の第19番)
出版
Librairie Séguier(リブレリー・セギエ)
IRCAM(フランス国立音響音楽研究所)
ポンピドゥー・センター(パリ)
用紙サイズ
116.0 × 77.0 cm
イメージサイズ
95.0 × 69.0 cm
レゾネ掲載
- Bruno Sabatier『Francis Bacon: The Graphic Work』No.14
- Alexandre Tacou『Francis Bacon: Estampes』No.9
コンディション
色彩は鮮やかで深みがあり、シミ・折れ・退色などの欠点は一切見られません。
本作品はフランスの提携画廊が保管している一点です。現地(フランス)の基準では状態は良好とのことですが、フランスと日本では経年品に対する状態評価の基準が異なる場合がございます。ヴィンテージ品としての経年による使用感(シミ・変色・折れ・しわ・焼け等)を含めてご了承いただいた上、ご購入をご検討ください。なお、弊社にて現物の確認は行っておりません。**より詳細な状態写真のご用意も可能ですので、ご購入前に是非お問い合わせください。**作品は現在フランスに保管されており、ご注文後の納品まで2週間以上のお日にちをいただいております。作品の性質上、ご購入後の返品はお受けできません。
作品について
**《Study for Portrait of Pope Innocent X after Velázquez》**は、フランシス・ベーコンを象徴する「教皇シリーズ」を代表するリトグラフ作品です。スペイン黄金時代の巨匠ディエゴ・ベラスケスが17世紀に描いた《教皇インノケンティウス10世の肖像》を出発点としながら、ベーコンはそれをまったく新しい現代絵画へと昇華させました。
興味深いことに、ベーコンは生涯を通じてベラスケスの原画に深い敬意を抱きながらも、「実物を見ることで自分のイメージが壊れることを恐れた」と語り、ローマの原画をあえて見ようとしませんでした。彼は写真や複製図版をもとに独自の解釈を重ね、権威の象徴である教皇を、人間の不安や孤独、存在の脆さを象徴する存在として描き出しました。
本作では、玉座に座る教皇は叫び声を上げるかのような表情を見せ、鋭い縦のストロークや透明な檻を思わせる線によって囲まれています。こうした表現は、宗教的権威を否定するものではなく、権力を持つ者であっても人間である以上、恐怖や孤独から逃れることはできないという、ベーコンの深い人間観を表しています。
ベーコンは「人物を歪めることで、写真では表現できない真実に近づける」と考えていました。そのため本作の変形した人物像は単なる抽象表現ではなく、人間の精神や感情をより直接的に伝えるための造形です。背景に広がる深い紫色や黒、そして人物を浮かび上がらせる鮮烈な色彩は、圧倒的な緊張感と静寂を同時に生み出し、観る者に強烈な印象を与えます。
1989年に刊行された本作品は、IRCAM(フランス国立音響音楽研究所)およびポンピドゥー・センターの関連出版として制作された、ベーコン版画の中でも特に重要な作品です。本作品は通常版60部とは別に制作された**H.C.(Hors Commerce/非売用)**エディションであり、本紙は20部のみ存在するH.C.版の第19番です。このような特別エディションは市場に出る機会が極めて少なく、国際的にも高い評価を受けています。
「教皇シリーズ」は、フランシス・ベーコン芸術の頂点を示す作品群として、美術史において極めて重要な位置を占めています。本作はその代表的イメージを優れたリトグラフ技術によって再現した希少作品であり、芸術性、歴史的重要性、希少性を兼ね備えたコレクターズ・ピースです。
20世紀美術を代表する巨匠フランシス・ベーコンの思想と表現を象徴する本作品は、美術館級のコレクションにふさわしい価値を持つとともに、長期的な資産価値も期待される重要な版画作品といえるでしょう。