ミッシェル・アンリ <黄金色のハーモニー> 油彩10号
ミッシェル・アンリ <黄金色のハーモニー> 油彩10号
ミッシェル・アンリは花をメインに描く画家でビュッフェ、ブラジリエなどと共に20世紀フランス画壇を代表する画家です。絵画から幸福感感じられるので、フランスでは幸福の画家、ポピーを多く描くのでアメリカではポピーの王様と呼ばれています。透明感のある色彩は、宝石に例えられます。赤はルビーの色、ブルーはサワイアの色、緑はエメラルドの色、深みのあるブラウンはトパーズの色言われます。ミッシェル・アンリの絵画はパリ市近代美術館、スエーデン王室、モナコ公国、サウジアラビ王室等が収蔵しています。ギャルリー亜出果は1995年以来ミッシェル・アンリの日本総代理店として日本各地の有名百貨店、画廊でミッシェル・アンリ来日展を企画し、ミッシェル・アンリの作家自筆サイン入りオリジナル版画の制作、絵画版画の販売、著作権の管理をしています。
ミッシェル・アンリはパリ、ベニスなどの美しい都市や原野を背景にブーケを、コクリコのブーケを前景いっぱいに描く事が多い。その意味では、ミッシェル・アンリの典型的なスタイルの絵だ。原野の向こうに小さな村の教会が描かれ、その向こうに山の稜線があり、その上に空が広がっている。いつも通りのミッシェル・アンリの原野と赤いコクリコの美しい構図の絵だ。しかし少し注意深く見ていると、この絵は他の原野とコクリコのブーケの絵と違う美しさに溢れている事に気付く。その違い見てみよう。ミッシェル・アンリは晴天下ではなく雨上がりの一瞬の原野の風景の美しさをこの絵に凝縮している。雨上がりの少し水分を含んだ空と空気と原野が描かれ、その手前に赤いコクリコのブーケが描かれている。雲の間から漏れる光が湿った空気の影響で濃いローズ色で描かれ所々霞んで見えている。原野のコクリコの花弁の赤、草花の緑や黄色も露の影響で霞んで震えているように見える。コクリコのブーケの花瓶が置かれている台座にも水溜りができていて、原野の草花の姿や、コクリコの花瓶を部分的に写し出している。強い雨が去った後、その余韻が残った風景がフレッシュな美しさで描かれている。
晴れわたった青空の下で描かれた絵とは少し違った趣が楽しめる。コクリコが咲き乱れるのは晴天が続く5月頃で、コクリコの原野がこの様に露を含んでいる姿にはなかなか出会えない。背景の原野の色彩も形状も水滴によって光の揺らぎで不明瞭なのに対して、コクリコのブーケは明確な形状を保って鮮烈な赤い色彩で優雅に力強く描かれている。揺らぐ不安定な背景とブーケの明確な色彩形状のコントラストが目に心地よい衝撃を与える。ミッシェル・アンリが描いた多くの原野を背景のブーケの絵の中で際立ってインパクトのある絵になっている。自然の僅かな表情の変化の中に新な美を発見し、表現するミッシェル・アンリの感性と力量には驚くばかりだ。
ギャルリー亜出果 武田康弘