ミッシェル・アンリ 【黄金色のベニス】 油彩25号F【額付】
ミッシェル・アンリ 【黄金色のベニス】 油彩25号F【額付】
1990年以前の作品
ミッシェル・アンリは花をメインに描く画家でビュッフェ、ブラジリエなどと共に20世紀フランス画壇を代表する画家です。絵画から幸福感感じられるので、フランスでは幸福の画家、ポピーを多く描くのでアメリカではポピーの王様と呼ばれています。透明感のある色彩は、宝石に例えられます。赤はルビーの色、ブルーはサワイアの色、緑はエメラルドの色、深みのあるブラウンはトパーズの色言われます。ミッシェル・アンリの絵画はパリ市近代美術館、スエーデン王室、モナコ公国、サウジアラビ王室等が収蔵しています。ギャルリー亜出果は1995年以来ミッシェル・アンリの日本総代理店として日本各地の有名百貨店、画廊でミッシェル・アンリ来日展を企画し、ミッシェル・アンリの作家自筆サイン入りオリジナル版画の制作、絵画版画の販売、著作権の管理をしています。
作品解説
ミッシェル・アンリ画集112P Venise d’or 収録
1990年以前の作品だろう。建物の輪郭線を全て太い線で、ときに2重になぞっている。1990年以降は、目立つ建築物のみを描き、それ以外の風景は暈かしたり縦横の細い線で省略している場合が殆どだ。この絵は、海側から向かって左の方から サンマルコ寺院を描いている。この角度から見ると、サンマルコ広場の茶色い尖塔型の鐘楼が大きく見えて、寺院の3つのドーム屋根の中央の大きなドーム屋根のみが見える。
ミッシェル・アンリは、輝く色彩で描く色彩画家と思われているが、デッサン、構図、マチエールの美しさも、卓越している。はっきりした輪郭線の建物は、ミッシェル・アンリとベルナール・ビュッフェが師事したボザール教授ナルボンヌから、二人とも継承している。ドーム屋根を頂点とした二等辺三角形と空に伸びる尖塔を横の辺として、ベニス水辺と、尖塔の頂点からドーム屋根を結ぶ線で囲われた三角形の2つの三角形が、手前のバイオレットの野ばらの(円形)球形と対峙して絵画に幾何学的な美しさを与えている。
小さな野ばらのブーケが、歴史上もっとも美しい水上都市ベニスと対等に描かれている。つまり、ミッシェル・アンリが、いかに花を愛しているかをこの絵は証明している。前景の野バラは、薄いバイオレットで描かれているので、その背景となる、水面はそれより薄いバイオレットと、薄い黄色オレンジ系の補色関係にある2系統の色彩で描かれている。ブーケの淡く可憐なバイオレットと一体感を保ちながら、補色で目立たせているのだ。ベニスの街もブーケより暗い茶色で絵描き、空も、バイオレットの補色のオレンジ系の黄色で描いている。つまり、全ての色彩は野バラのバイオレットを目立たせ美しく見せる事に配慮されながら選ばれている。厳格で強い線で描かれた硬い表情の建物が、水面の光りとブーケの柔らかな雰囲気と対比されている。ミッシェル・アンリはどうしても、控えめな色彩のバイオレットを絵の主役にして描きたかったのだろう。その主役の野バラを支える様々の仕掛けをしているのだ。
ギャルリー亜出果 武田康弘