ギャルリー亜出果
あおきさとこ 「いいにおいの居るところ - light roast H600×W200×D38mm
あおきさとこ 「いいにおいの居るところ - light roast H600×W200×D38mm
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dyeing series
2026
ミクストメディア
アクリル絵具、岩絵具、顔料、キャンバス
H600×W200×D38mm
本作は、これまでの「dyeing series」とは異なり、上下端に深緑地へ金の線描で草花文様を配した帯を持つ、掛け軸を思わせる縦長の構成をとっている。中央の本紙にあたる部分は生成りがかったアイボリーで満たされ、その中に、コーヒーカップから立ちのぼる湯気を頂点として、傘型あるいは木の葉が幾重にも重なり合うような大きなドーム状のかたちが広がっている。
ドームを構成する一枚一枚の葉は、深緑・黒・水色・金・グレーなど異なる文様と色でそれぞれ丁寧に描き分けられ、まるでコーヒーの木の葉と、焙煎豆の香ばしさが視覚化されたかのような趣を持つ。ドームの中央からは細い線が真っ直ぐ下へと伸び、コーヒー豆をひとつ抱えるようにして眠る小さな生き物が寄り添い、さらにその先には小さな鉢のような形が結ばれている。線の周囲には、湯気のような白い曲線と、点在するコーヒー豆のモチーフが優しく描き加えられている。
タイトルの「いいにおいの居るところ」は、コーヒーという飲み物が持つ、豆から抽出され立ちのぼる香りそのものを、目に見える情景として描き出そうとする試みである。副題の「light roast(浅煎り)」は、その香りの質――軽やかで爽やかな、浅煎りのコーヒーが持つ明るい風味を象徴していると考えられる。カップから立ちのぼる一杯の湯気が、豆から葉へ、そして木そのものへとつながる大きな世界を静かに広げていく様子は、日常の何気ないひとときの中にある豊かな情景を、まるで一幅の絵のように留めている。
作家ステートメントにある通り、本作もまた染色技法を用いずに、アクリル絵具と岩絵具、キャンバスによって染色特有の"ぼかし"や"絞り"、友禅染の細い線描を再現する試みの一つである。
【作家コメント】
元染色作家である あおきさとこによる、染色の「概念」に焦点をあてたシリーズ。それは「染めずに染色を表現する」という新しい試みである。
アクリル絵具にキャンバス地という絵画ではポピュラーな素材を用いて、染め特有のぼかしや絞りを再現し、和の風合いの掛け軸のようなデザインや色合いだったり、友禅染の細い線だったり、染めている時に感じた「染色の良さ」をふんだんに盛り込んだ作品である。
染色好きとしては、本物の染色品には敵わない部分もあるかもしれないが、染めずに染色を表現することで、染色品では課題であった「退色」を解決でき、染色の良さをより永く後世へ残していけるシリーズとなっている。このシリーズによって、少しでも染色に興味を持ってもらえるきっかけになったら嬉しい。
