ギャルリー亜出果
井口エリー Mojyu 1
井口エリー Mojyu 1
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17×17×3.8cm 革・フェイクファー・塩ビシート
透明な塩ビシートの中に封じ込められた赤い拳銃。その背後には黒と金色のフェイクファーが広がり、銃口やグリップには黄色いリング状の装飾が散りばめられている。本作《Mojyu》は、暴力の象徴である拳銃を鮮やかな色彩と装飾性によって大胆に変容させ、現代社会における「危険」と「魅力」の曖昧な境界を問いかける作品である。
拳銃は本来、人の命を奪うための道具であり、恐怖や権力、暴力を象徴する存在である。しかし井口エリーは、それを深紅の革やフェイクファー、透明な樹脂の中へと置き換えることで、本来の機能を失わせ、まるでファッションアイテムやショーケースに飾られたオブジェのような存在へと変貌させている。そこには、「私たちは物の本質を見ているのか、それとも表面的な美しさに惹かれているのか」という鋭い問いが込められている。
タイトルの**「Mojyu(猛獣)」**は、一見すると拳銃そのものを指しているようにも思える。しかし、本当に恐ろしい「猛獣」とは武器なのか、それとも武器に魅了され、ときに暴力を消費し娯楽へと変えてしまう人間の欲望なのか。作品は明確な答えを示すことなく、見る者自身の価値観に問いを委ねている。
背景を覆うフェイクファーは、野生動物の毛皮を思わせる有機的な質感を持ち、人工物である拳銃と対照的な存在として画面に生命感を与えている。その上から透明な塩ビシートで全体を覆う構成は、まるで危険な存在を封印しているかのようでもあり、同時に商品パッケージやショーウィンドウを連想させる。暴力さえも商品化し、美しく演出してしまう現代の消費社会への批評性が、この作品には静かに込められている。
井口エリーは、武器を肯定するのではなく、その象徴性を無力化し、美術作品へと転換することで、暴力の本質を逆説的に浮かび上がらせている。《Mojyu》は、危険と美、恐怖と誘惑、現実と虚構が交錯する現代社会を映し出す寓話であり、鑑賞者に「本当に恐れるべきものは何なのか」という普遍的な問いを静かに投げかける作品である。
