ギャルリー亜出果
あおきさとこ 一幅の ぽっこりなヒト図」 H900×W300×D38mm (コピー)
あおきさとこ 一幅の ぽっこりなヒト図」 H900×W300×D38mm (コピー)
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dyeing series
2023
ミクストメディア
アクリル絵具、顔料、樹脂、キャンバス
本作は、縦長の掛け軸を思わせる細長い画面構成が特徴的な一点である。上下端には紺地に金・銀の線描で草花や種子文様が描かれた"表具"のような帯が配され、まるで実際の掛け軸のように、中央の本紙にあたる部分を額縁のように囲んでいる。
中央の画面は、上部の淡いグレーから、うっすらと黄みがかった中間色を経て、下部の柔らかな白へと静かにグラデーションしていく。その中を、無数のタンポポの綿毛が上から下へとゆっくり舞い降りていく様子が、繊細な線描で描かれている。
画面下方には、丸みを帯びた体に、白・紺・緑・青・グレーなど複数の色面が組み合わさった、"ぽっこり"とした愛嬌のある生き物(ヒト)が佇んでいる。頭部には白い鳥のような丸みがあり、体の部分は幾何学的な色面分割によって構成され、しましま模様の足元からは水滴のような雫が垂れている。生き物の下には、光を思わせる淡い黄色の台座のような形が敷かれ、静かにその存在を支えている。
タイトルの「ぽっこりなヒト」が示す通り、この生き物はどこか丸くふくよかで、力の抜けた愛らしい佇まいを持つ。舞い落ちる綿毛の軽やかさと、ヒトの持つ"ぽっこり"とした重み・柔らかさが対比的に描かれ、静かで穏やかな時間の流れを感じさせる一幅となっている。
作家ステートメントにある通り、本作は染色技法を用いずに、アクリル絵具とキャンバスによって染色特有の"ぼかし"や"絞り"、友禅染の細い線描といった質感を再現する「dyeing series」の一作である。掛け軸という和の様式そのものをモチーフに取り入れることで、染色文化への敬意と、その魅力を絵画という形で後世に残そうとする作家の意図がより色濃く表れた作品といえる。
【作家コメント】
元染色作家である あおきさとこによる、染色の「概念」に焦点をあてたシリーズ。それは「染めずに染色を表現する」という新しい試みである。
アクリル絵具にキャンバス地という絵画ではポピュラーな素材を用いて、染め特有のぼかしや絞りを再現し、和の風合いの掛け軸のようなデザインや色合いだったり、友禅染の細い線だったり、染めている時に感じた「染色の良さ」をふんだんに盛り込んだ作品である。
染色好きとしては、本物の染色品には敵わない部分もあるかもしれないが、染めずに染色を表現することで、染色品では課題であった「退色」を解決でき、染色の良さをより永く後世へ残していけるシリーズとなっている。このシリーズによって、少しでも染色に興味を持ってもらえるきっかけになったら嬉しい。
